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エリアの持ち家率・平均世帯年収の調べ方 — 公的データでどこまでわかるか

2026年7月19日 / 最終更新 2026年7月19日
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監修:タスデータ(住所・地図データの専門チーム)
国勢調査の小地域集計や課税状況調をもとに、エリア属性の集計を提供している立場から、実測値と推計値の境目を整理しています。

「持ち家が多いエリアを狙いたい」「所得水準の高い地域から回りたい」——リフォーム、住宅設備、保険、不動産といった商材では、こうしたエリア選びの相談が出てきます。ただ実際に調べようとすると、持ち家率はすんなり出るのに、世帯年収だけがどうにも出てこないという壁に当たります。

これは探し方の問題ではなく、データの存在そのものが違うためです。この記事では、何が公的統計に実測値として存在し、何が存在しないのかを分けて整理します。

結論:この2つは、性質がまったく違う

項目公的統計取れる粒度
持ち家率・共同住宅率あり(国勢調査・実測)町丁目単位
世帯の構成・単身率・子育て世帯率あり(国勢調査・実測)町丁目単位
平均世帯年収なし—(推計に頼るしかない)
納税者1人あたり課税対象所得あり(課税状況調・実測)市区町村単位

順に見ていきます。

持ち家率は、町丁目単位で無料で取れる

総務省統計局の国勢調査には、小地域集計という町丁目単位の集計があり、この中に「住宅の所有の関係」の表があります。ここで気をつけたいのが、粒度によって取れる区分の細かさが違うという点です。

粒度取れる区分
市区町村単位持ち家/公営の借家/都市再生機構(UR)・公社の借家/民営借家/給与住宅 の内訳まで
町丁目単位(小地域)住宅に住む一般世帯/持ち家/民営借家 の3つ

つまり「この町丁目の給与住宅(社宅)の割合」までは取れません。町丁目で持ち家率を出す場合は、持ち家の世帯数 ÷ 住宅に住む一般世帯数という形になります。分母が「一般世帯数」ではなく「住宅に住む一般世帯数」である点は、他の統計と突き合わせるときに効いてきます。

同じく「住宅の建て方」の表からは、一戸建てか共同住宅かの比率が取れます(町丁目単位では主世帯・一戸建・共同住宅)。いずれもe-Statから無料でダウンロードでき、出典を明記すれば商用利用も可能です。

実際にやるときの手数

データがあることと、すぐ使えることは別問題です。実務では次の工程が発生します。

  1. e-Statで対象の表(所有関係・建て方)を都道府県ごとにダウンロード
  2. 境界データ(町丁目のポリゴン)を別途ダウンロード
  3. 調べたい地点を緯度経度に変換し、半径の円と町丁目を重ね合わせる
  4. 円からはみ出た町丁目を面積で按分して合計する

3と4は地図データを扱う処理になるため、Excelだけでは完結しにくい部分です。市区町村単位でよければ1と表計算だけで済みますが、「駅から半径1km」のような範囲で見たい場合はこの工程が必要になります。

平均世帯年収の公的統計は、存在しない

ここが、この記事で最も伝えたい部分です。町丁目単位はもちろん、市区町村単位でも「平均世帯年収」という公的統計は存在しません。国勢調査は所得を調査項目に含んでいないためです。

したがって、商圏分析サービスの画面に平均世帯年収が表示されている場合、その数字は各社が独自の方法で推計したものです。推計が悪いという話ではなく、実測値と同じ確度のものとして扱うと判断を誤りかねない、という性質の違いだと筆者は捉えています。

サービスによって同じ地点の平均世帯年収が食い違うことがありますが、これはどちらかが間違っているというより、推計モデルが違うためだという見方ができます。数字を資料に載せるときは、推計であることと算出方法を併記しておくと、後から突っ込まれたときに説明がつきます。

公的統計で最も近いもの:課税対象所得

所得水準の代理指標として使えるのが、総務省「市町村税課税状況等の調」に収録されている課税対象所得納税義務者数です。前者を後者で割ると「納税者1人あたりの課税対象所得」が出ます。「統計でみる市区町村のすがた」にも収録されており、無料で参照できます。

ただし、使うときに押さえておきたい制約が3つあります。

制約内容
粒度市区町村単位。町丁目や半径1kmには落とせない
単位「世帯あたり」ではなく「納税者1人あたり」。共働き世帯が多い地域では世帯年収との差が大きくなる
対象課税対象所得なので、納税義務のない層は分母にも分子にも入らない

それでも、市区町村間の相対的な所得水準の差を見る用途では、実測値として使える貴重なデータです。

タスデータでの扱い方(算出ロジックの開示)

参考までに、当サービスの商圏レポートでこの2項目をどう扱っているかを書いておきます。推計を出す以上、方法を隠さない方が使う側が判断しやすいと考えているためです。

レポートの画面上でも、項目ごとに出典と粒度の一覧を出しています。「これは町丁目の実測、これは市区町村の推計」と分けて見えるようにするためです。存在しないデータを、存在するかのように細かい粒度で出すことはしない、という方針をとっています。

住所を1つ入れると、その周辺の持ち家率・共同住宅率・世帯の構成・平均世帯年収(推計)まで無料で確認できます。
すべて出典と粒度つき。人口・年齢構成・2050年の将来推計・最寄り駅・周辺施設の件数も同じ1枚に載ります。

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使うときの前提として

持ち家率にせよ所得水準にせよ、出てくるのはそのエリアの平均です。持ち家率70%のエリアにも借家の世帯は3割いますし、所得水準の高い市区町村にもさまざまな世帯があります。エリアの優先順位づけの材料にはなっても、個別の世帯の状況を示すものではない、という点は前提として置いておく必要があります。

営業リストのエリア分けやポスティング先の絞り込みのように、限られた回数をどこに使うかを決める場面で効いてくるデータだ、という捉え方が実態に合っているように思います。

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