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タスデータコラム › なぜ地図の上で作業させないのか

なぜ、地図の上で作業させないのか — タスデータの設計思想

2026年9月4日 / タスデータ編集部
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監修:タスデータ(住所・地図データの専門チーム)
地図データを扱うサービスをゼロから設計してきた立場から、あえて地図の上で作業させないという判断の経緯を開示します。

CSVに緯度経度や商圏人口を付けたいと相談すると、たいてい最初に候補に挙がるのは「地図が動くツール」です。Google Maps Platformのような地図API、あるいはQGISのようなGISソフト。どちらも地図を画面に表示し、その上でデータを扱う道具です。

タスデータには、この「地図の上で作業する画面」がありません。処理した結果を見返すための結果マップはありますが、これは付与した緯度経度が意図どおりの場所に落ちたかを確かめるためのビューで、地図の上でデータを作る場所ではありません。ここでは、作業用の地図UIを持たないというプロダクト方針に至った理由を整理します。論点は2つの既存ツールが実際に持つハードルと、そこから見えてくる設計思想です。

論点1: Google Maps Platformというハードル — 保存の制約と料金体系

地図を表示する定番の選択肢がGoogle Maps Platformです。精度・知名度とも高い一方、公式ポリシーには2つの制約があります。

1つ目は、取得した位置情報の扱いです。Geocoding APIの公式ポリシーでは、取得した位置情報の事前取得・キャッシュ・保存が原則として禁止されています。無期限の保存が認められる例外はplace IDのみです。地図の上に都度表示して使う用途を前提にした条件であり、結果をCSVの列として保存し続ける用途とは、そもそも前提が違います。

2つ目は料金です。Google Maps Platformは従量課金制(pay-as-you-go)で、利用量に応じて課金されます。かつては一律で月間200ドルの無料クレジットが付与されていましたが、2025年3月1日付でこの一律クレジットは廃止されました。廃止後は、SKUカテゴリ別に無料の月間利用回数が設定される体系に変わっています。

SKUカテゴリ無料の月間利用回数
Essentials10,000回
Pro5,000回
Enterprise1,000回
Map Tiles(2D)/Street View Tiles100,000回

枠を超えた分は従量課金で積み上がっていきます。「営業リストの住所に列を1本足したい」という用途に対して、保存の制約と従量課金という2つの条件が同時にかかってくる、というのが実務上のハードルです。

論点2: QGISというハードル — 無料だが「地図ソフト」である

もう一つの代表的な選択肢がQGISです。QGISはGNU General Public License v2以降(GPLv2+)でライセンスされた、無料のフリー・オープンソースソフトウェアで、OSGeo(Open Source Geospatial Foundation)の公式プロジェクトとして開発されています。ライセンス費用がかからず、機能面でも広く使われている点は大きな強みです。

一方でQGISは、その名の通り地図(GIS)を扱うために作られたアプリケーションです。レイヤーを重ねる、座標系を設定する、空間結合を行うといった操作を、地図の画面上で組み立てていく形になります。高機能な分だけ操作の種類も多く、一般的にはこの手のGISソフトを使いこなせるようになるまでに一定の習熟が必要だと言われています。

「CSVに緯度経度の列を1本足したいだけ」という要件に対して、地図ソフトとしての操作体系をまるごと習得することは、必ずしも要件と釣り合っているとは言えません。無料であることと、その用途に対して手間が見合っているかは、別の話です。

論点3: 「地図を見せる」と「列を増やす」の違い

ここまでの2つの論点に共通しているのは、どちらのツールも「地図を画面に表示すること」を前提に設計されているという点です。Google Maps Platformは地図表示とセットの利用を想定した規約になっており、QGISは地図を操作するためのソフトウェアです。地図を見せることが目的であれば、どちらも適した道具です。

しかし、営業リストやCSVを扱う実務の要件は、多くの場合「地図が見たい」ではなく「表の列を増やしたい」です。住所の並んだ表に、緯度経度・最寄り駅・商圏人口といった列が増えて返ってくれば、それ以上の操作は発生しません。この場合、地図を画面に表示する機能そのものが、要件に対して余計な工程になります。

タスデータはこの整理から、地図の上で作業する画面を持たず、CSVをアップロードして結果を列として受け取る設計を採っています。地図の操作を覚える必要自体を、はじめから発生させないという方針です。

では「結果マップ」は何なのか — 作業用GISではなく確認用ビュー

ここまでの方針と一見矛盾しますが、タスデータのアプリには結果を地図で表示する画面があります。処理が終わったあとに開く「結果マップ」です。これは作業用のGISではなく、確認用のビューとして置いています。

住所からの緯度経度付与は、表記ゆれや地名の重複によって、意図しない場所へ落ちることがあります。数字の列を眺めていても気づきにくい一方、地図に落として全体を見ると、ぽつんと離れた点として見つけやすくなります。結果マップは、この「変な場所へ飛んでいないか」を見るためのものです。

そのため、できることは意図的に絞っています。

結果マップでやること結果マップでやらないこと
付与した点の分布を見る(点が多いときはまとめて表示する)地図の上で点を打つ・動かす・編集する
点をクリックして、その行の値を確認するレイヤーを重ねる・座標系を設定する・空間分析を行う
そのままCSV・Excelをダウンロードする地図そのものを成果物として作り込む

結果は7日間サーバーに保管され、同じアカウントでログインすれば別の端末からでも「最近の処理結果」から開けます。7日を過ぎると自動的に削除されるため、長く残す場合はCSVをダウンロードして保管する形になります。

言い換えると、地図は成果物ではなく検算の位置づけです。成果物はあくまで列の増えた表で、地図はそれが正しいかを確かめるために開く画面、という整理をしています。

論点4: それぞれの立ち位置を並べると

ここまでの内容を、用途の前提という軸で並べると次のようになります。

選択肢前提としている用途コストの性質
Google Maps Platform地図を画面に表示し、その場で利用する従量課金(SKUカテゴリ別の無料枠あり)
QGIS地図を画面上で操作・分析する無料(GPLv2+・OSGeo公式プロジェクト)。操作の習得が必要
タスデータCSVの列を追加して受け取る(地図は結果の確認用)月100行まで無料。地図の操作の習得は不要

どれが優れているという話ではなく、それぞれが最初に何を前提として設計されているかが違う、ということです。地図を見せたいならGoogle Maps PlatformやQGISが選択肢になりますし、表の列を増やしたいだけなら、その前提を持つツールを選ぶほうが工程が短くなります。

住所入りのCSVをアップロードすると、緯度経度・最寄り駅・商圏人口などの列が追加されて返ってきます。
地図の上で作業する画面は開きません。処理が終わったあとに、結果マップで落ちた場所を確認できます。無料アカウントで月100行まで試せます。

CSVをアップロードして試す →
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