駅の乗降客数を一覧で調べる方法 — エクセルで使える形にするまで
「この駅は1日に何人くらい使われているのか」。店舗の立地や物件の説明資料で、駅の利用者数を根拠として添えたい場面は少なくないようです。1駅だけなら鉄道会社のサイトで数字を見れば足りますが、複数の駅を並べて比べたいとなると、一覧の形で手に入れてエクセルに落とす作業が必要になります。ここでは、駅の乗降客数を一覧で手に入れる方法と、エクセルで扱える形にするまでの流れを整理し、一覧にしたあとでつまずきやすい点を論点として並べていきます。
論点1: 数字の出どころは「鉄道会社の公表値」と「国土数値情報」の2つ
駅の利用者数の出どころは、大きく分けて2つあります。
鉄道会社が自社サイトで公表している数字
多くの鉄道会社が、駅ごとの1日平均の利用者数を自社サイトで公表しています。たとえばJR東日本は「各駅の乗車人員」を、東京メトロは「各駅の乗降人員ランキング」を掲載しています。1社の路線の中で駅を比べるなら、この公表値がもっとも手早い情報源です。
ただし、会社をまたいで並べるときは注意が要ります。公表している数字の定義が会社によって違うためです。
| 公表元 | 公表している数字 | 中身 |
|---|---|---|
| JR東日本 | 各駅の乗車人員 | 乗車した人数のみ。降車の人員は含まれない |
| 東京メトロ | 各駅の乗降人員 | 1日平均の乗降人員(乗り降りの両方) |
乗車だけの数字と、乗り降りを合わせた数字を同じ表に並べると、同じくらいの規模の駅でも大きな差があるように見えてしまいます。東京メトロのランキングでは、他社線との直通連絡駅や共用している駅を別の表に分けて掲載している、という違いもあります。
国土数値情報「駅別乗降客数データ」
もう1つが、国土交通省の国土数値情報「駅別乗降客数データ」です。全国の駅を1つのデータにまとめたもので、一覧として手に入れるならこちらが本命になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収録内容 | 駅ごとの1日あたり乗降客数 |
| 収録年度 | 2011年度〜2024年度(各年度の値が列として並ぶ) |
| 原典 | 鉄道事業者提供資料 |
| 提供形式 | GML・シェープファイル・GeoJSON |
| 使用許諾条件 | オープンデータ(CC BY 4.0) |
| 最終更新 | 2026年4月に2024年度版へ更新 |
属性には駅名・運営会社・路線名に加えて、年度ごとの乗降客数・データ有無コード・重複コード・備考が含まれます。鉄道会社のサイトを1社ずつ回るより、はるかに少ない手間で全国の一覧が揃います。
ただ、国土数値情報も万能ではありません。データの説明には「各事業者から提供された駅別乗降客数は、各社で独自に算出したものであり、統一的な基準に基づいたものではありません」と明記されています。1つのファイルにまとまっていても、数字の算出方法まで揃っているわけではない、という点は押さえておく必要があります。
論点2: エクセルで開くまでの「ひと手間」
国土数値情報の3つの形式は、どれも地図で使うことを前提にした形式です。ダブルクリックすればエクセルの表になる、というものではありません。エクセルで扱える形にするには、主に2つの道があります。
方法A: GeoJSONをエクセルのPower Queryで読み込む
エクセルには、外部のデータを取り込むPower Queryという機能があります。JSON形式のファイルを読み込み、表の形に展開することもできます。GeoJSONはJSONの一種なので、この機能で読み込めます。
ただしGeoJSONは「地物(features)の中に属性(properties)が入っている」入れ子の構造をしているため、読み込んだあとに列を展開する操作が何段階か要ります。Power Queryに慣れている人なら短時間で終わる作業ですが、初めてだと戸惑うかもしれません。
方法B: 無料のGISソフト(QGIS)でCSVに書き出す
もう1つは、無料のGISソフトであるQGISでシェープファイルやGeoJSONを開き、CSVなど別の形式で保存し直す方法です。QGISは書き出し先の形式としてCSVなどを選べるため、書き出したCSVをエクセルで開けば、駅が1行ずつ並んだ表になります。
どちらの方法でも、「全国の駅と年度別の乗降客数が並んだ表」までは無料でたどり着けます。
論点3: 一覧にしたあとでつまずきやすい3つの点
表の形になったあとで、「数字がおかしい」と感じる場面がいくつかあります。多くはデータの作りを知っていれば説明がつくものです。
1. 乗換駅で、路線によっては数字が空になっている
複数の路線が乗り入れる駅は、路線ごとに行が分かれています。そのうえで、データの説明には「複数路線の駅において一番中心に近い駅にのみデータを付加」と書かれています。路線名で絞り込んだときに、大きな駅なのに乗降客数が空の行が出てくるのはこのためです。
同じ駅をまとめて扱いたいときの手がかりとして、「グループコード」があります。300m以内の距離にあって同じ名称の駅を1つのグループとして同じコードを振ったもので、乗換駅をひとまとめにして集計するときに使えます。
2. 空欄は「利用者ゼロ」ではない
乗降客数が入っていない行には、年度ごとの「データ有無コード」で理由が付いています。原典資料に情報が含まれない場合は「2(データ無)」、情報が非公開の場合は「3(データ非公開)」です。北海道旅客鉄道・東日本旅客鉄道の無人駅や、九州旅客鉄道の上位300駅以外などは、データが非公開または未記載とされています。
3. どの年度の、どの版の数字か
国土数値情報の表には2011年度から2024年度までの列が並んでいるため、「最新の年度だけを使う」のか「推移を見る」のかで、使う列が変わります。資料に数字を載せる場面では、どの年度の値かを書き添えておく運用がよく見られます。
版にも触れておきます。現行の2024年度版の使用許諾条件はCC BY 4.0で、出典を表記すれば商用の資料にも使えます。一方、平成23〜25年度の資料を原典とする旧版のページには、原典資料を収集する際の取り決めにより商用利用はできない旨が書かれていました。検索で古いページにたどり着くこともあり、ダウンロードする版と使用許諾条件の確認は外せない点だと筆者は捉えています。出典の書き方はオープンデータを商用利用するときの出典表記のやり方で整理しています。
論点4: 自分の住所リストと突き合わせるなら
駅の一覧が欲しいだけなら、ここまでの方法で十分です。国土数値情報をダウンロードして表にする方が、どのツールを使うより早いと筆者は考えています。
もう一歩進んで、「自社の店舗リストや物件リストの1件1件について、最寄り駅とその乗降客数を知りたい」となると、話が変わります。住所から緯度経度を出し、全国の駅との距離を測って最寄りを選び、その駅の乗降客数を引いてくる、という作業が必要になるためです。最寄り駅を付ける作業の中身は住所リストに最寄り駅を一括で付ける方法で整理しています。件数が少なければ、地図で1件ずつ調べて手で書き写す方法でも足ります。
住所のCSVをアップロードすると、「最寄り駅」「路線」「最寄り駅までの直線距離」「最寄り駅の乗降客数(日)」の列を右側に付けて返します。
乗降客数は国土数値情報(駅別乗降客数データ・2024年度版)の最新年度の値で、その年度が欠けている駅は過去の年度にさかのぼって埋めています。最寄り駅と乗降客数は、無料プラン(月100行)から使えます。
先に1地点だけ試すなら 商圏レポート(住所を入れるだけ・無料) でも最寄り駅の乗降客数を確認できます。
まとめ
- 駅の利用者数の出どころは、鉄道会社の公表値と国土数値情報「駅別乗降客数データ」の2つ。全国の一覧が欲しいなら国土数値情報(2011〜2024年度・CC BY 4.0)が手早い
- 会社によって「乗車人員」と「乗降人員」で定義が違う。JR東日本は乗車のみ、東京メトロは乗降の両方。国土数値情報も各社の独自算出で、基準は統一されていない
- 国土数値情報は地図用の形式なので、エクセルで使うにはPower QueryでGeoJSONを読むか、QGISでCSVに書き出すひと手間が要る
- 一覧にしたあとは、乗換駅の空欄(重複コード)・空欄の意味(データ有無コード)・年度と版の3点でつまずきやすい
- 自分の住所リストの1件ずつに最寄り駅と乗降客数を付けたい場合は、距離計算を含む別の作業になる。そこを一括処理でまとめる、という位置づけでタスデータのCSVアップロードがある