外国人が多いエリアを数字で調べる方法 — 国勢調査と在留外国人統計の使い分け
看板やチラシを多言語にするかどうか、外国人スタッフの採用を見込める店舗はどこか、この物件は外国籍の入居者に向けて募集できるか——実務でこうした判断をするとき、「このエリアは外国人が多い」という感覚を数字に置き換えて資料に載せる場面があります。
ここでは、その根拠として使われる2つの公的統計——国勢調査の国籍別人口と、出入国在留管理庁の在留外国人統計——の性質差を整理し、市区町村より細かい単位で数字を出す方法とその限界を論点として並べていきます。
論点1: 2つの統計は「誰を数えているか」が違う
どちらも「日本にいる外国人の数」を表す統計ですが、母集団の定義が別です。まず国勢調査から見ます。
国勢調査 — 居住実態(常住者)で数える
総務省統計局の「国勢調査の基本に関するQ&A」は、問3-1で「国勢調査では、住民票などの届出場所に関係なく、10月1日現在、ふだん住んでいる場所で調査票にご記入いただきます。『ふだん住んでいる場所』とは、3か月以上住んでいる場所か、3か月以上にわたって住むことになっている場所をいいます」と説明しています。さらに問3-14では「国勢調査では、国籍に関係なく、すでに3か月以上住んでいるか、3か月以上住むことになっている場所で調査を行います」と明記されています。
つまり国勢調査の外国人人口は、住民票の届出場所ではなく実際の居住実態で数えた数字です。調査対象から外れるのは、外国政府の外交使節団・領事機関の構成員等と、外国の軍隊の軍人・軍属およびその家族とされており、在留資格の有無はこの除外基準に含まれていません。在留資格を持たない人が形式上は対象から除外されているわけではない、という整理になります。
在留外国人統計 — 在留資格の記録で数える
もう一方の在留外国人統計は、出入国在留管理庁が「中長期在留者及び特別永住者」を対象として集計する統計です。同庁の用語の解説では、中長期在留者を次の①〜⑥のいずれにもあてはまらない者と定義しています。
- ①「3月」以下の在留期間が決定された者
- ②「短期滞在」の在留資格が決定された者
- ③「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者
- ④これらに準ずる特定活動に該当する者
- ⑤特別永住者(別途集計)
- ⑥在留資格を有しない者
そのうえで「在留外国人=中長期在留者及び特別永住者」と定義されています。より広い「総在留外国人」という集計もありますが、こちらも「在留資格を持って我が国に在留する外国人」が前提であるため、在留資格を有しない人はどちらの集計にも含まれません。超過滞在等の人数は、同庁が「本邦における不法残留者数について」として別建てで公表しています。
| 観点 | 国勢調査(国籍別人口) | 在留外国人統計 |
|---|---|---|
| 作成元 | 総務省統計局 | 出入国在留管理庁 |
| 数える基準 | 10月1日現在の常住地(3か月以上の居住実態) | 在留カード等で把握される在留資格 |
| 3か月以下の滞在者 | 対象外(3か月以上が条件) | 対象外(在留期間3月以下・短期滞在は除外) |
| 在留資格を持たない人 | 除外基準に含まれない | 含まれない(別統計) |
| 外交・公用の在留資格 | 外交官等は除外 | 除外 |
| 在留資格別の内訳 | なし | あり |
| 更新の頻度 | 5年ごと(国勢調査の年) | 年2回(6月末・12月末時点) |
「3か月」という線引きは両者で共通しています。それでも数え方の入口が居住実態と在留資格で分かれているため、同じエリアの外国人数でも一致しません。
在留外国人統計の最新値(2026年9月時点)
2026年9月時点で最新の公表は「令和7年末現在における在留外国人数について」で、対象時点は2025年12月31日です。
| 項目 | 値(2025年12月末現在) |
|---|---|
| 在留外国人 総数 | 412万5,395人(前年末比 +35万6,418人・+9.5%) |
| うち中長期在留者 | 385万8,499人 |
| うち特別永住者 | 26万6,896人 |
| 在留資格別(上位) | 永住者 94万7,125人/技術・人文知識・国際業務 47万5,790人/留学 46万4,784人 |
総数は初めて400万人を超え、過去最高となりました。なお在留外国人統計は年2回公表される統計なので、この記事を読む時点ではより新しい時点の数字が出ている可能性があります。
論点2: 2つの数字はずれる。ずれの向きも指摘されている
2つの統計を並べると、国勢調査側のほうが小さい数字になる傾向が学術的に指摘されています。京都大学の石川義孝氏による「外国人関係の2統計の比較」(人口学研究 第37号)は、2000年時点で国勢調査報告の外国人数1,310,545人が、もう一方の統計の1,686,444人より37.6万人少ないことを示しています。
同論文はその最大の要因として、「不法就労・資格外活動・超過滞在などによって外国人としての自らの地位に不安を覚える登録外国人が、入国管理局による摘発を恐れて、国勢調査に非協力的になる」ことを挙げ、国籍不詳者228,561人の存在を傍証として提示しています。
ただしこの比較は2000年のデータに基づくもので、当時の相手方統計は在留カード制度以前の外国人登録統計です。数量差をそのまま現在にあてはめられる分析ではありません。2つの統計の数字が一致しないこと自体は構造的なもので、どちらかが誤りというわけではない、という背景として読める材料だと筆者は捉えています。
論点3: 市区町村より細かい単位で出せるか
実務で使いたい粒度は、多くの場合「市区町村より細かい単位」です。ここが2つの統計それぞれの限界が出るところです。
国勢調査の国籍別人口は市区町村まで
令和2年国勢調査で国籍別の人口を収録しているのは、表番号44-1「男女,国籍別人口-全国,都道府県,市区町村」です。表題のとおり、公開単位は全国・都道府県・市区町村の3区分で、町丁・字等の小地域や地域メッシュでの国籍別公開はありません。
e-Statでの辿り方は、政府統計コード00200521(国勢調査)→ 令和2年国勢調査 → 人口等基本集計 → 外国人 → 表44-1、の順です(統計表ID 0003445244)。
一方、外国人の総数だけであれば町丁・字等まで下りられます。小地域集計の項目に「男女別人口,外国人人口及び世帯数-町丁・字等」があり、町丁・字等ごとの外国人人口が収録されています。ただしこの表に国籍別の内訳は含まれていません。
在留外国人統計は「記者発表」と「詳細表」で粒度が違う
在留外国人統計を検索して最初に見つかるのは、たいてい記者発表(プレスリリース)です。ここに載っているのは都道府県別までで、市区町村別の集計は含まれていません。
市区町村単位の数字は、e-Stat(政府統計の総合窓口)で公開されている詳細版の在留外国人統計にあります。「市区町村別 国籍・地域別 在留外国人」という別表が存在し、市区町村単位の在留外国人数を国籍・地域別に確認できます。速報として出る記者発表と、あとから出る詳細表は別物、という構造です。どの時点の市区町村別表まで公表済みかは、e-Stat側で該当表の一覧を見て確かめる形になります。
| 欲しい粒度 | 使える表 | 国籍別の内訳 |
|---|---|---|
| 全国・都道府県 | 国勢調査 表44-1/在留外国人統計(記者発表・詳細表) | あり |
| 市区町村 | 国勢調査 表44-1/在留外国人統計の詳細表「市区町村別 国籍・地域別」 | あり |
| 町丁・字等(小地域) | 国勢調査 小地域集計「男女別人口,外国人人口及び世帯数-町丁・字等」 | なし(外国人の総数のみ) |
| メッシュ | 国勢調査 地域メッシュ統計 | 未確認(項目一覧の直接確認が必要) |
整理すると、「国籍別に見たい」と「町丁目レベルで見たい」は、公的統計の公開単位の上では同時に満たせません。国籍別が要るなら市区町村までで止まり、町丁目まで下りるなら外国人の総数だけになります。多言語対応で「どの言語を用意するか」まで決めたい場面と、「この店舗の周辺に外国人がどれだけ住んでいるか」を見たい場面では、そもそも別の表を見ることになります。
論点4: 比率を出すときの時点と分母
「外国人が多いエリア」を比率(%)で示す場面では、分子と分母の時点が揃っているかが結果を左右します。自治体が公表している住民基本台帳ベースの数字は更新が早く、直近の状況を示す材料としてよく参照されます。
| エリア | 時点 | 総人口 | 外国人 | 比率 |
|---|---|---|---|---|
| 群馬県 大泉町 | 2026年8月31日現在 | 41,304人 | 9,251人 | 約22.4% |
| 東京都 新宿区 | 2026年9月1日現在 | 355,042人 | 51,175人 | 約14.4% |
| 大阪市(市全体) | 2025年12月末現在 | — | 214,337人(161の国・地域) | 約7.7% |
| 東京都(都全体) | 2025年1月1日現在 | 14,002,534人 | 721,223人 | 約5.15% |
いずれも住民基本台帳に基づく自治体・都の公表値です。大阪市の比率は政令指定都市のなかで人数・比率とも最多とされています。区単位では、大阪市生野区の外国籍住民が31,355人(2025年12月末、大阪市公式)で、大阪市24区のうち人数・比率とも最多です。区内人口に対しては概ね2割強という水準になります。
ここで注意が要るのは、これらの数字と国勢調査・在留外国人統計を同じ表に並べると、3つの系列が混ざることです。住民基本台帳は届出、国勢調査は居住実態、在留外国人統計は在留資格の記録です。エリアを横並びに比べる資料では、同じ系列・同じ時点で揃えたうえで、出典と時点を数字のすぐ横に書き添える運用がよく見られます。
比率の高いエリアは、時期によって数字が動く幅も大きくなります。大泉町は2024年11月末時点では総人口41,495人・外国人8,306人(約20.0%)で、上毛新聞が「初めて2割超」と報じていました。新宿区も2025年1月1日時点では総人口352,717人・外国人48,097人(約13.6%)とする二次情報があります。「◯◯町は外国人比率が2割」と書くときは、どの時点の数字かまで含めて1組で扱うほうが、あとから照合されたときに齟齬が出にくくなります。
論点5: 自分の拠点リスト・物件リストの1件ずつに付けるなら
先に率直に書くと、調べたい地点が1つか2つなら、手作業で十分です。市区町村単位でよければ、e-Statで表44-1を開くか、自治体サイトの人口ページを見れば数分で終わります。町丁目単位の外国人人口も、該当する市区町村の小地域集計をダウンロードして目的の町丁を探すだけです。ツールを挟むほどの作業ではありません。
手数が問題になるのは、拠点や物件が数十件・数百件あって、それぞれの周辺半径◯mという単位で数字を揃えたい場合です。この形にするには、住所を緯度経度に変換し、地点ごとに円を描き、円にかかる区画を面積で按分して合計する工程が入ります。商圏人口の計算方法(面積按分)で扱っているのと同じ処理です。
タスデータでの扱い(算出ロジックと列名の開示)
参考までに、当サービスでこの数字をどう扱っているかを書いておきます。
- CSVをアップロードするときに「住む人のプロファイル(男女比・外国人・一人暮らし・子育て世帯の比率)」を選ぶと、各行の右側に5列が付きます。列名は
半径◯m男性比率%・半径◯m女性比率%・半径◯m外国人比率%・半径◯m一人暮らしなど世帯率%・半径◯m18歳未満の子がいる世帯率%で、◯mには指定した半径が入ります - 外国人比率の算出は、令和2年国勢調査の500mメッシュ統計の「外国人人口」を半径の円で面積按分し、同じ円の人口で割るという計算です。小数第1位まで出します
- 国籍別の内訳は持っていません。同梱しているメッシュ統計に収録されているのが外国人人口の総数だけであるためです。「どの言語を用意するか」の判断には、論点3の表44-1や在留外国人統計の市区町村別表を別途あたる形になります
- 時点は2020年(令和2年)国勢調査です。論点4で挙げた自治体公表値のような直近の数字ではないため、比率が短期間で動いているエリアでは差が出ます
- 出典表記は、出力ファイルの「出典」シートに「出典: 総務省統計局『国勢調査』地域メッシュ統計 (e-Stat)」として入ります。e-Statのデータは出典明示と加工した旨の明示を条件に商用利用が可能です(出典表記のやり方)
- プロファイルは有料プランの機能です。無料プラン(月100行)で使えるのは緯度経度・最寄り駅・市区町村・商圏人口/世帯数・世帯構成までで、プロファイルを含む付与はStandard 月4,980円(50,000行)/Pro 月9,800円(200,000行)の範囲になります
1地点だけなら、無料の商圏レポートでその周辺の外国人比率が確認できます。
住所を入れるだけで、人口・世帯数・年齢構成とあわせて表示します。登録は不要で、項目ごとに出典と粒度を明記しています。
まとめ
- 国勢調査は居住実態(3か月以上の常住)で数え、住民票の届出場所や国籍を問わない。在留外国人統計は中長期在留者+特別永住者で、在留期間3月以下・短期滞在・外交・公用・在留資格を有しない人は含まない
- 最新の在留外国人数は412万5,395人(2025年12月末現在・前年末比+9.5%)で、初めて400万人を超えた。在留資格別の内訳も公表されている
- 国籍別に見たいなら国勢調査の表44-1(全国・都道府県・市区町村の3区分)か、在留外国人統計の詳細表「市区町村別 国籍・地域別」。記者発表は都道府県別まで
- 町丁・字等まで下りられるのは外国人の総数だけ(小地域集計「男女別人口,外国人人口及び世帯数」)。国籍別の内訳は小地域には存在しない
- 比率で示すときは、住民基本台帳・国勢調査・在留外国人統計という3つの系列と時点が混ざりやすい。数字の横に出典と時点を併記する運用が見られる
- 1〜2地点なら手作業で足りる。数十〜数百地点を半径◯m単位で揃える段階で、面積按分を含む一括処理という選択肢が出てくる