出店候補地を複数まとめて比較する方法 — 商圏・競合・人口・年収を1枚の表にする
出店を検討するとき、候補地は1つとは限りません。3件、5件、時には数十件のリストから絞り込む場面もあります。ここでは、複数の候補地を商圏人口・競合店舗数・年収・高齢化率・将来人口といった指標で横並びに比較する方法を整理します。1地点だけを調べる方法はすでに複数あるので、ここでは「候補地が複数あるとき、何が変わるか」という論点に絞ります。
論点1: 出店候補地の比較で見られる指標は、だいたい5つに収まる
業種によって重みは変わりますが、実務でよく使われる指標を並べると次のようになります。いずれも個別の調べ方はすでに記事にしているので、まずは全体像として一覧にします。
| 指標 | 何が分かるか | 出どころ | 詳しい調べ方 |
|---|---|---|---|
| 商圏人口・世帯数 | 候補地の周辺にどれだけ人がいるか | 国勢調査(地域メッシュ統計) | 商圏人口の調べ方 |
| 競合店舗数 | 同業態が周辺にどれだけあるか | 地図アプリの目視・経済センサス | 競合店舗数の調べ方 |
| 平均世帯年収・持ち家率 | 購買力・居住の安定度 | 市区町村・都道府県単位の推計 | 持ち家率・世帯年収の調べ方 |
| 高齢化率 | 介護・医療系の需要の目安 | 国勢調査(町丁目単位) | 高齢化率データの調べ方 |
| 将来人口 | 10年後・25年後も客がいるか | 将来推計人口(メッシュ・市区町村) | 将来人口から出店を判断する |
それぞれの調べ方は、個別記事で無料の公的データを使う手順を扱っています。ここで押さえておきたいのは、5つの指標が5つの別々の統計表から来ているという点です。1つの窓口でまとめて出てくるわけではありません。
論点2: 候補地が1件なら、この手間は問題にならない
正直に書くと、候補地が1つだけなら、5つの統計表を1回ずつあたるだけで済みます。各指標の個別記事にある手順どおりに、jSTAT MAP・e-Stat・経済センサスをそれぞれ開いて数字を拾えば、無料で完結します。わざわざ表にまとめるツールを探す必要はありません。
手間が変わるのは、候補地が複数になったときです。5つの統計表を1回ずつ、候補地の数だけ繰り返すことになります。候補地が3件なら15回、10件なら50回のデータ取得と転記が発生する計算です。
論点3: 候補地を横並びで比較するときに、追加で起きること
件数の掛け算だけでなく、複数候補地の比較には固有の作業がいくつか加わります。
① 半径をそろえる
商圏人口や競合店舗数は、半径をいくつに取るかで数字が変わります。候補地ごとに別々の半径で調べてしまうと、後から横並びで比べられません。半径をどう選ぶかは個別記事に譲りますが、複数候補地を比較する前提では、全候補地で同じ半径を使うことが最初の条件になります。
② 転記先の表を自分で作る
5つの統計表から拾った数字を、候補地×指標のマトリクスにまとめる作業そのものは、Excelで手作業になります。統計表ごとに単位や表記が違うため、単純なコピー&ペーストでは揃いません。
③ 秘匿処理・データの粒度の違いを候補地ごとに確認する
高齢化率や将来人口は町丁目・メッシュ単位で秘匿処理がかかる場合があります(高齢化率データの調べ方で扱っています)。候補地が特定の地域に集中していると、同じ秘匿の影響を複数の候補地で受けることもあります。
論点4: 候補地数が増えたときの選択肢
ここまでの3つの論点をまとめると、候補地の比較で増える作業は「統計表を引く回数」「半径をそろえる手間」「転記してマトリクスを作る作業」の3つです。件数が少ないうちは手作業で十分に成立しますが、件数が増えるほど、この3つがそのまま比例して増えていきます。
タスデータのCSV一括処理は、この3つをまとめて機械的に処理する形をとっています。住所(候補地)の列があるCSVをアップロードし、必要な指標にチェックを入れると、行ごとに列が追加されて返ってきます。半径は300m/500m/1km/3kmから1つを選び、全候補地に共通で適用されるため、論点3の①(半径をそろえる)はアップロードの時点で解決します。
| 比較したい指標 | タスデータのオプション |
|---|---|
| 商圏人口・世帯数 | 「商圏」の「人口・世帯数」(半径は共通設定) |
| 競合店舗数(コンビニ・スーパー・ドラッグストアなど12業態) | 「近くの施設の件数」 |
| 平均世帯年収・持ち家率 | 「平均世帯年収(推計)・平均世帯貯蓄」「持ち家率・共同住宅率」 |
| 高齢化率 | 「高齢化率・年少人口」(人口・世帯数とセットのオプション) |
| 将来人口 | 「将来人口(2050年)と増減率」 |
候補地ごとに条件(半径や項目)を変えたい場合は、この一括処理は向きません。全候補地に同じ条件が適用されるため、条件を変えたい候補地群ごとに分けて処理する運用になります。逆に言えば、同じ条件で横並びに比較したい場合には相性がよい形です。
候補地の住所リストをアップロードすると、商圏人口・競合店舗数・年収・高齢化率・将来人口が列としてまとめて追加されます。
候補地が何件でも、統計表を1つずつ引き直す作業を繰り返さずに済みます。無料アカウントで毎月100行まで試せます。
競合店舗数・年収・高齢化率・将来人口は有料プランの項目です。商圏レポート(無料・登録不要)で見られるのは、人口・世帯数・世帯の構成・最寄り駅です。
まとめ
- 出店候補地の比較でよく使う指標は商圏人口・競合店舗数・年収・高齢化率・将来人口の5つ。それぞれ出どころの統計表が異なる
- 候補地が1件なら、5つを個別に調べれば無料で完結する
- 候補地が複数になると、統計表を引く回数が候補地数倍になり、半径をそろえる・転記してマトリクスを作るという作業が加わる
- 競合店舗数だけは公的統計が市区町村単位までしか出ないため、半径指定では別の方法が要る
- 同じ条件で横並びに比較したい場合、CSV一括処理でこの3つの手間をまとめて処理できる。候補地ごとに条件を変えたい場合は一括処理には向かない